【水準測量】レベルの「使い方」から「計算方法」までを分かりやすく解説|レベル測量の基本
このブログは、「水準測量」の基本についてわかりやすく解説した記事となります。
よかったら参考にしてください。
水準測量(leveling)
水準測量とは簡単に言うと「高い場所と低い場所の差を正確に測る測量」です。
水準測量の分類
水準測量は高低測量ともいわれ、主にレベルを用いて2点間の高低差や、多くの地点の地盤高を測定したり、一定の高さを確認するための測量です。
水準測量は大きく「直接水準測量」と「間接水準測量」に分類されます。
水準測量というときは「直接水準測量」を意味しています。
- 直接水準測量とは、レベルと標尺によって直接高低差を求める方法。
- 間接水準測量とは、トランシットを用いて鉛直角を測り、計算によって高低差を求める方法で三角測量の高低計算に相当するので三角水準測量とも呼ばれています。
高さの基準
日本の陸地の高さの基準となる点を「水準原点」といいます。
東京湾平均海面を±0とし、ここから陸地へ24.4140mのところに水準原点を設置しています。(東京都千代田区永田町にあります)https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/suijun-base.html
水準点(ベンチマーク:BM)とは標高を示す点で、測量を行う場合の基準となり水準原点より実測されています。
国道や県道沿いに1~2㎞毎に水準点が設置されています。
レベル
オート(自動)レベル
現場でよく使用される測量器械が「レベル」です。
「水準儀(すいじゅんぎ)」とも言います。
レベルには、「オート(自動)レベル」、「チルチングレベル」、「電子レベル」、「ハンドレベル」などの種類があります。
現在、一般的使用されているレベルのほとんどは「オートレベル」です。
ということで、オートレベルについて解説していきます。
オートレベルの画像です。
オートレベルは、右回りか左回にしか回りません。
レベルの据え付けは、三脚をしっかり地盤に刺して、グラつかないように固定します。
次に、レベル本体を三脚に設置して整準ネジで水平にします。
オートレベルは、円形気泡管の気泡を「合わせ円」の中に整準ねじを使ってもってくるだけで、自動的に水平になります。
これは、器械内部の自動補正機構(コンペンセータCompensator)によって、レベル本体が傾いても自動補正範囲内であれば、視準線が自動的に水平になる構造となっているからです。
オートレベルの「オート」とは「自動補正機構(コンペンセータ)」のことです。
円形気泡管の「気泡」は下の図のように左親指の方向に動きます
レベルの十字線
望遠鏡をのぞくと縦と横の黒い線が見えます。
この黒い線が「十字線」です。
望遠鏡の十字横線を使ってスタッフの目盛を読みます。
下の画像は、望遠鏡をのぞいた時のものです。
十字線には2つの種類あります。
「十字型」と「くさび型」です。
一般的に倍率26倍の器械には「十字型」が使われています。
28倍や32倍の器械には「くさび型」が使われています。
遠距離の読み取りに有効なのは「くさび型」です。
そして、1等水準測量で使用するマイクロメーターの目盛をくさび型の較合糸の中央に標尺の目盛を正しく導き、0.1㎜単位まで読むときに使用します。
十字横線の上下にある短い横線は「スタジア線」といいます。
このスタジア線を使って「距離」を測量することができます。
詳しくはこちらのブログを参考にしてください。
標尺(staff or leveling rod)
直接水準測量に用いられる目盛を記した度器で標尺といいます。
レベルの望遠鏡の水平視準線の高さを示すための器具です。
板形・箱形の断面をしているので「箱尺」とも言われます。
種類
標尺は大別して、ターゲット標尺(target rod)と自読標尺(self-reading rod)があります。
ターゲット標尺は河川の両岸で測量するような遠距離を視準する場合とか、または正確を要する時に使用しますが、現在はあまり使われていないようです。
自読標尺は観測者自身が望遠鏡で視準すると同時に十字線の位置を読取るものです。
標尺手は標尺を鉛直に立てると良いだけなので、作業が迅速で十分な精度を得ることができ、一般的に広く使われています。
自読標尺にはアルミニウム製のスタッフがあります。
一般的にスタッフは2m~7mの長さ等があり、釣り竿の様に収納できます。
- 全長5m 5段収納
- 全長5m 4段収納
- 全長5m 3段収納
- 全長3m 3段収納
- 全長7m 4段収納
このスタッフを測定したいポイントに立ててレベルで覗き、焦点板を使って1㎜単位で読みます。
目盛の読み方
スタッフの目盛を読んでみましょう。
こちらのブログでは、10種類の例題があり、読み方の練習ができます。
よかったら参考にしてください。
レベルでスタッフの目盛を読む際は、スタッフが垂直に立っていなければなりません。
スタッフを持つ人は、レベルの方向から見て、前後にゆっくり揺らします。
その状況でレベルを覗くと、スタッフの目盛の値が大きくなったり小さくなったりするように見えます。
目盛が「最小値」の時が垂直の状態です。
この写真の場合、スタッフの読みは39㎝1㎜(0.391m)となります。
スタッフを伸ばして使用する際は、必ず後ろのボタンを確認しましょう。
スタッフの裏側にある目盛(㎜単位)の使い方についてはこちらのブログを参考にしてください。
実際に計算してみよう
計算方法
工事現場では「器高式」による水準測量を行うのが一般的です。
- ベンチマークにスタッフを立てて読みます。上の図では4m11㎝4㎜の読みになっています。
- この読みにベンチマークの数値を足します。 10.000+4.114=14.114m これが、レベルの器械高(IH)となります。
- 地盤高を知りたいポイントにスタッフを立てて読みます。上の図では88㎝8㎜です。
- 器械高14.114から0.888を引くと地盤高が算出できます。14.114-0.888=13.226m
No(測点) | B,S(後視) | I,H(器械高) | F,S(前視) | G,H(地盤高) |
BM(ベンチマーク) | 4.114 | 14.114 | 10.000 | |
地盤高を知りたいポイント1 | 0.888 | 13.226 | ||
という計算式になります。
- B,S(後視、バックサイト):高さの基準となる点にスタッフを据え、レベルで視準した読み。
- I,H(器械高):レベルの視準線までの高さ。
- F,S(前視、フォアサイト):高さを知りたい点にスタッフを据え、レベルで視準した読み。
- G,H(地盤高、グランドハイ):地盤の高さ。一般的に標高で表します。
- T,P(もりかえ点、ターニングポイント):視準距離が長くなったり、障害物で見えなくなった場合にレベルを移動する必要が出てきます。その時の中間点です。前視と後視の両方を測定します。
- I,P(中間点):単にその点の標高を求めるために標尺を立てて前視だけをとる点。
野帳
現場で測量した時に数値やいろいろな計算結果などを記録するメモ帳があります。
このメモ帳を「野帳(レベルブック)」といいます。
普通の紙だと雨の日などは濡れてしまって鉛筆で書けなくなってしまうのですが
【測量野帳「耐水」LEVEL BOOK防水】は紙が樹脂ベースの合成紙を使っていて、耐水紙より水や汚れに強く作られています。
水の中でも普通に鉛筆で書けてしまいます。
野帳の書き方
水準測量の野帳の記入方法には「昇降式」と「器高式」の2つの方法があります。
- 器高式:中間点が少ない場合に使用します。
- 器高式:中間点が数多くある時に使用します。
現場では「器高式」を使うのがほとんどですので、器高式の計算方法を紹介しますね。
下の図のような水準測量を行った場合の「器高式」の記入例を紹介します。
測量した月日と天気そしてどこの測量をしたのかを記入します。
右側のスペースに「略図」を書いたりします。
他の人が見ても内容が分かるように記入しましょう。
先ほど同じように、I,H(器械高)からF,S(前視)引き算してG,Hを計算しております。
BM=100.000m
IH=100.000+2.133=102.133
№1=102.133ー2.816=99.317
TP=102.133-4.891=97.242
IH=97.242+0.284=97.526
№2=97.526-3.608=93.918
№3=97.526ー4.417=93.109
FHは「計画高」です。
ΔhはGHとFHの「差」です。
この部分の書き方は人それぞれ違うようですので、わかりやすいように記入しましょう。
水準測量誤差についてはこちらの記事を参考にしてください。↓
終わりに
このブログでは「水準測量について」、「オートレベルの説明」、「スタッフの読み方」、「器高式による計算方法と野帳の書き方」についてわかりやすく解説いたしました。
測量は間違えると現場に大きな影響を与えます。
私がレベルを覗いてスタッフを読む場合は、数値を2~3回声に出して読むようにして、読み間違いが無いようにしています。
まだ慣れていないうちは、少し時間をかけて間違えないようにゆっくりスタッフを読みましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「絵とき 測量」(改訂2版)株式会社オーム社
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