3点からの【後方交会法】器械点座標計算手順|誤差の計算方法

このブログでは「後方交会法」の計算方法についてお話しします。
3つの既知点(座標点)からトータルステーション(TS)の位置(座標)を計算します。
この測量方法の大きな利点として、「2つの既知点からの後方交会法」よりも精度が高いことです。そして、トータルステーションを測量しやすい場所に据え付けすることができるので、障害物の多い現場や土工事の丁張設置などの現場測量におススメです。
「2つの既知点からの後方交会法」についてはこちらのブログを参考にしてください。

測量
既知点「T1」「T2」「T3」の3点を測量します。
最初にトータルステーション(TS)を任意の場所に据付けます。
その機会を据え付けたポイントを、器械点「KP」とします。
既知点「T3」を視準し、水平角度を「0セット」します。そして水平距離「d」を測定します。
次に既知点「T2」を視準して、水平角度「E」と水平距離「c」を測定します。
最後に、既知点「T1」を視準して、水平角度「A」と水平距離「b」を測定します。
下の図は、T1~T3の座標値と測量した水平角度と水平距離を表示したものです。


誤差の確認
測量した水平距離と水平角度から「T1」と「T2」の座標間の距離「a」と、「T2」と「T3」の座標間の距離「e」を「余弦定理」で出します。
その結果と、座標の値を「三平方の定理」で計算した「a」と「e」とで比較し、どのくらいズレているかを確認します。

測量した距離と角度から「a」と「e」を算出
T1からT2までの水平距離「a」を、測量で実測した水平距離「b」「c」と水平角度「A」から算出します。
算出方法は「余弦定理」です。
$$a^2=b^2+c^2-2bc cosA$$
この公式に測量した値を代入します。
$$a^2=85.301^2+87.823^2-2×85.301×87.823×cos100°48’23″$$
$$a=133.410$$
したがって、T1~T2までの距離「a」は133.410mとなりました。
次に、T2からT3までの水平距離「e」を、測量で実測した水平距離「c」「d」と水平角度「E」から算出します。
$$e^2=c^2+d^2-2cd cosE$$
この公式に測量した値を代入します。
$$e^2=87.823^2+79.553^2-2×87.823×79.553×cos62°44’39″$$
$$e=87.421$$
したがって、T2~T3までの距離「e」は87.421mとなりました。
座標から「a」と「e」を算出
はじめに「T1」と「T2」の座標値から「三平方の定理」で「a」を算出します。

T1(42.961,83.621)とT2(149.597,163.790)のそれぞれ「X」と「Y」の差を計算します。
$$T1X-T2X=42.961-149.597=-106.636$$
$$T1Y-T2Y=83.621-163.790=-80.169$$
「X」と「Y」の差から三平方の定理で「a」を算出します。
$$a^2=x^2+y^2$$
$$a=\sqrt{(-106.636^2)+(-83.621^2)}$$
$$a=133.410$$
したがって、T1~T2までの距離「a」は133.410mとなりました。
次に、「T2」と「T3」の座標値から同じく「三平方の定理」で「e」を算出します。

T2(149.597,163.790)とT3(205.600,96.663)のそれぞれ「X」と「Y」の差を計算します。
$$T1X-T2X=149.597-205.600=-56.003$$
$$T1Y-T2Y=163.790-96.663=67.127$$
「X」と「Y」の差から三平方の定理で「a」を算出します。
$$a^2=x^2+y^2$$
$$a=\sqrt{(-56.003^2)+67.127^2}$$
$$a=87.421$$
したがって、T2~T3までの距離「e」は87.421mとなりました。
誤差
測量より求めた値 | 座標値より求めた値 | 差 | |
距離 a | 133.410m | 133.410m | 0 |
距離 e | 87.421m | 87.421m | 0 |
誤差が大きい場合は、器械点の位置と後視点(3点)の位置関係が二等辺三角形に近くなるようにし、夾角を90度から120度の間に納まるようにTSを据え付けます。
夾角が狭すぎたり広すぎたりすると、誤差が大きくなります。
外接円中心の座標計算
それぞれのポイント(既知点T1,T2,T3、器械点KP)を通る「外接円」の中心点(G、Q)の座標を求めます。

外接円中心「G」の座標計算
はじめに中心「G」の外接円の半径を正弦定理で求めます。
$$\frac{a}{sinA}=\frac{b}{sinB}=\frac{c}{sinC}=2R$$
$$\frac{a}{sinA}=2RG$$
$$RG=\frac{133.410}{2×sin100°48’23”}$$
$$RG=67.909$$
したがって半径RG=67.909mとなります。
次に線aの角度「H]を求めます。

三角関数で計算します。
$$tanH=\frac{106.636}{80.169}$$
$$H=53°3’51″$$
次に外接円中心点Gの座標を計算します。
中心点Gを計算するには「円に接する四角形の性質」を使用します。

X軸の計算
$$Gx=RGsin(H-(A-90°))$$
$$Gx=67.909sin(53°3’51”-(100°48’23”-90))$$
$$Gx=45.667$$
Y軸の計算
$$Gy=RGcos(H-(A-90°))$$
$$Gy=67.909cos(53°3’51”-(100°48’23”-90))$$
$$Gy=50.261$$

基準となったT1の座標値にそれぞれ加えていきます。
$$GX=42.961+45.667=88.628$$
$$GY=83.621+50.261=133.882$$
したがって、中心点Gの座標値は(88.628,133.882)となります。
外接円中心「Q」の座標計算
次に、中心「Q」の外接円の半径を正弦定理で求めます。
$$\frac{a}{sinA}=\frac{b}{sinB}=\frac{c}{sinC}=2R$$
$$\frac{e}{sinE}=2RQ$$
$$RQ=\frac{87.421}{2×sin62°44’39”}$$
$$RQ=49.170$$
したがって、半径RQ=49.170mとなります。
次に線eの角度「I]を求めます。

$$tanI=\frac{56.003}{67.127}$$
$$I=39°50’16″$$
次に外接円中心点Qの座標を計算します。
X軸の計算
$$Qx=RQsin(I-(E-90°))$$
$$Qx=49.170sin(39°50’16”-(90-62°44’39”))$$
$$Qx=45.293$$
Y軸の計算
$$Qy=RQcos(I-(E-90°))$$
$$Qy=49.170cos(39°50’16”-(90-62°44’39”))$$
$$Qy=19.138$$

基準となったT3の座標値にそれぞれ加えていきます。
$$QX=205.600-45.293=160.307$$
$$QY=96.663+19.138=115.801$$
したがって、中心点Qの座標値は(160.307,115.801)となります。
2つの外接円中心座標から器械点(KP)を求める
最初に中心間「s」の計算、次に角度「J」の計算、角度「K」の計算、最後に器械点「KP」の座標計算という流れになります。

外接円中心点間距離「s」の計算
O(88.628,133.882)とQ(160.307,115.801)のそれぞれ「X」と「Y」の差を計算します。
$$OX-QX=88.628-160.307=-71.679$$
$$OY-QY=133.882-115.801=18.081$$
「X」と「Y」の差から三平方の定理で「s」を算出します。
$$s=\sqrt{(-71.679^2)+(18.081^2)}$$
$$s=73.924$$
したがって、距離「s」は73.924mとなりました。
角度「J」の計算
算出方法は「余弦定理」です。
$$RO^2=s^2+RQ^2-2sRQ cosJ$$
この公式に測量した値を代入します。
$$67.909^2=73.934^2+49.170^2-2×73.924×49.170×cosJ$$
$$J=63°15’40″$$
したがって、角度「J」は63°15’40″となりました。
角度「K」の計算
三角関数で計算します。
$$tanK=\frac{160.307-88.628}{115.801-133.882}$$
$$K=75°50’33″$$
したがって、角度「K」は75°50’33″となりました。
器械点「KP」の座標計算
角度「J」と「K」を使い三角関数で計算します。

X軸の計算
$$\frac{KPx}{49.170}=sin(180-(63°15’40″+75°50’33”))$$
$$KPx=32.191$$
Y軸の計算
$$\frac{KPy}{49.170}=cos(180-(63°15’40″+75°50’33”))$$
$$KPy=37.167$$
基準となった中心点「Q」の座標値にそれぞれ加えていきます。
$$KPX=160.307-32.191=128.116$$
$$KPY=115.801-37.167=78.634$$
したがって、器械点「KP」の座標値は(128.116,78.634)となります。
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございました。
3点の既知点(座標点)から任意の器械点を求める後方交会法の計算方法を解説いたしました。。
この測量は既知点3点の角度と距離を使って計算するので、計算上の誤差を含む可能性があります。
土工事などの現場測量に利用して、正確さを要する構造物などの測量は、座標点に器械を据え付けて測量するようにしましょう。
今回使用した公式は「正弦定理」「余弦定理」「三平方の定理」「三角関数」「円に接する四角形の性質」の5つになります。
皆様の参考になれば幸いです。

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