仮ベンチマーク(KBM)の作り方「誤差の調整」について
このブログでは、水準測量(レベル測量)で仮ベンチマークを作る方法を解説します。
基本的に、レベルによる測量の誤差が許容誤差範囲内に入っているかを確認し、その誤差を調整・割り振りして、仮ベンチマークの標高を決定します。
KBMとは
仮ベンチマークとは、工事を施工する近くに、仮となる水準点を設置したものをいいます。
仮とは言っても、現場の基準となる水準点ですので、許容誤差以内に収まるように測量します。
水準測量の許容誤差
KBM設置測量では「3級水準測量」又は「4級水準測量(傾斜が多い山の中の現場の場合等)」で行います。
Sは片道の観測距離で単位は「km」です。
区分 | 往復差 | 環の閉合差 | 既知点~既知点 | 視準距離 |
1級水準測量 | 2.5√S | 2√S | 3√S | 最大50m |
2級水準測量 | 5√S | 5√S | 6√S | 最大60m |
3級水準測量 | 10√S | 10√S | 12√S | 最大70m |
4級水準測量 | 20√S | 20√S | 25√S | 最大70m |
簡易水準測量 | 片道観測 | 40√S | 50√S | 最大80m |
1・2級水準測量は、測量機器から選定されていて、測量業者さんが行う測量になるので、現場施工業者は3級・4級・簡易水準測量で行います。
誤差の調整方法
往復差
- 基準となる水準点(BM)からKBMまでをレベルで測ります。(往路)
- レベルを少し移動して器械高を変えます。
- KBMを基準にBMまでをレベルで測量します。(復路)
- 往復測量して誤差が何㎜あるのかを確認します。
- 誤差が許容範囲を超えると、測り直し(再測)となります。
- 誤差を平均して、KBMの標高を決定します。
往路測定のレベルブック(野帳)
測点 | 距離 | 後視(BS) | 器械高(IH) | 前視(FS) | 標高(GH) |
BM | 2.563 | 14.908 | 12.345 | ||
TP1 | 35.0 | 1.695 | 15.740 | 0.863 | 14.045 |
TP2 | 40.0 | 2.159 | 16.169 | 1.730 | 14.010 |
TP3 | 45.0 | 2.697 | 17.902 | 0.964 | 15.205 |
KBM | 32.0 | 1.005 | 16.897 | ||
計 | 152.0 | 9.114 | 4.562 | 高低差=4.552 |
復路測定のレベルブック(野帳)
測点 | 距離 | 後視(BS) | 器械高(IH) | 前視(FS) | 標高(GH) |
KBM | 1.123 | 18.020 | 16.897 | ||
TP3 | 32.0 | 0.816 | 16.022 | 2.814 | 15.206 |
TP2 | 45.0 | 1.971 | 15.983 | 2.010 | 14.012 |
TP1 | 40.0 | 0.956 | 15.003 | 1.936 | 14.047 |
BM | 35.0 | 2.656 | 12.347 | ||
計 | 152.0 | 4.866 | 9.416 | 高低差=4.550 |
BMに帰ってきたときの測定誤差が、「12.347-12.345=+0.002」となりました。
許容誤差を計算します。
3級水準測量とした場合、10√S=10×√0.152=3.8987㎜≒3.8㎜(切り捨て)となりました。
測定誤差が2.0㎜<3.8㎜ということで「OK」となります。
3.8㎜以上の誤差の場合は再測となります。
2㎜の誤差の調整を行います。
往路の高低差4.552m
復路の高低差4.550m
往復の高低差の平均=(4.552+4.550)÷2=4.551m
BM(12.345m)に4.551mを足します。
決定KBM標高=12.345+4.551=16.896m
となります。
測点 | 距離 | 追加距離 | 往路高 | 復路高 | 調整 | 決定標高 | 備考 |
BM | 0.0 | 0.0 | 12.345 | 12.347 | 12.345 | (与点) | |
TP1 | 35.0 | 35.0 | 14.045 | 14.047 | |||
TP2 | 40.0 | 75.0 | 14.010 | 14.012 | |||
TP3 | 45.0 | 120.0 | 15.205 | 15.206 | |||
KBM | 32.0 | 152.0 | 16.897 | 16.897 | 16.896 | ||
計 | 152.0 | 高低差 4.552 | 高低差 4.550 | 平均 4.551 |
環の閉合差(BMからぐるっと1週してBMに戻る)
「環の閉合差」は基準となる水準点(BM)からぐるりと1周して、もとのBMに戻ってきた時の誤差を確認する方法となります。
- BMからKBM1をレベルで測量します。
- KBM1からKBM2をレベルで測量します。
- KBM2からKBM3をレベルで測量します。
- KBM3から元のBMに戻ってきて測量します。
- 誤差が何㎜あるのかを確認します。
- 誤差が許容誤差を超えるとやり直し(再測)となります。
- 誤差を測定距離に応じて分配します。
環の閉合差のレベルブック(野帳)
測点 | 距離 | 後視(BS) | 器械高(IH) | 前視(FS) | 標高(GH) | |
BM | 1.354 | 13.699 | 12.345 | |||
KBM1 | 45.3 | 1.058 | 13.516 | 1.241 | 12.458 | |
KBM2 | 22.5 | 1.423 | 13.436 | 1.503 | 12.013 | |
KBM3 | 46.2 | 1.331 | 13.803 | 0.964 | 12.472 | |
BM’ | 28.3 | 1.461 | 12.342 | |||
計 | 142.3 | 5.166 | 5.169 |
戻ってきたときのBM測定値が、「12.342-12.345=-0.003」となります。
許容誤差を計算します。
3級水準測量とした場合、10√S=10×√0.142.3=3.772㎜≒3.7㎜(切り捨て)となりました。
測定誤差が3.0㎜<3.7㎜ということで「OK」となります。
3.7㎜以上の誤差の場合は再測となります。
-3㎜の誤差の調整を行います。
各KBMの調整量=-閉合誤差×(出発点からの距離÷総距離)
- KBM1の調整量=ー(-0.003×45.3m÷142.3m)=+0.0009≒+0.001
- KBM2の調整量=ー(-0.003×67.8m÷142.3m)=+0.0014≒+0.001
- KBM3の調整量=ー(-0.003×114.0m÷142.3m)=+0.0024≒+0.002
- BM’の調整量=ー(-0.003×142.3m÷142.3m)=+0.0030
測点 | 距離 | 後視(BS) | 器械高(IH) | 前視(FS) | 標高(GH) | 調整量 | 調整標高 |
BM | 1.354 | 13.699 | 12.345 | ||||
KBM1 | 45.3 | 1.058 | 13.516 | 1.241 | 12.458 | +0.001 | 12.459 |
KBM2 | 22.5 | 1.423 | 13.436 | 1.503 | 12.013 | +0.001 | 12.014 |
KBM3 | 46.2 | 1.331 | 13.803 | 0.964 | 12.472 | +0.002 | 12.474 |
BM’ | 28.3 | 1.461 | 12.342 | +0.003 | 12.345 | ||
計 | 142.3 | 5.166 | 5.169 |
ということで、決定標高は
KBM1=12.459m
KBM2=12.014m
KBM3=12.474m
となりました。
さいごに
今回のブログでは、仮ベンチマークの作り方ということで、レベルで測量したときの誤差の処理と、標高の決定方法について解説させていただきました。
1つ目は、往復測量した時の誤差の処理についてお話ししました。
高低差を平均してKBMの標高を決定します。
2つ目は、環の閉合差についてお話ししました。
BMからKBM1~2~3と測量して、BMに戻ってきた時の誤差が何㎜あるのかを確認します。
誤差を、測定距離の割合に応じて分配し、KBMの標高を決定します。
測量は「誤差」が付き物です。
許容誤差を確認して、上手に誤差を処理していきましょう。
以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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