せん断力と曲げモーメントとは?Q図・M図の描き方を新人向けにやさしく解説
構造力学入門シリーズ 第5回|建設ナビかわしも
この記事の結論
反力を求めたら、次は梁の“中”にはたらく力=断面力を見ます。
梁を切ると断面に 軸力N・せん断力Q・曲げモーメントM が現れ、横荷重の梁では QとM が主役です。
曲げモーメントMが最大の場所が、いちばん危ない(断面を大きく・鉄筋を増やす所)。
求め方は「切って片側のつり合い」で、ΣV→Q、切り口まわりΣM→M。
集中荷重の単純梁では Q図は段差、M図は三角形 になり、最大曲げモーメントは Mmax=Pab/L で求まります。

せん断力と曲げモーメントとは?(結論)
前回、梁を支える反力を求めました。今回はその続きで、梁の“中”にはたらく力を読みます。
梁を任意の位置で切ると、その断面に せん断力Q(ずらす力) と 曲げモーメントM(曲げる力) が現れます。
とくにMが最大になる場所が、曲げで壊れやすい、いちばん危ない場所です。
この2つを位置ごとに図にしたものが、せん断力図(Q図) と 曲げモーメント図(M図)。
梁のどこを補強すべきかが、一目でわかるようになります。

断面力とは?(N・Q・M)
断面力とは、梁の中にはたらく力のことで、次の3種類があります。

| 断面力 | 意味(かみくだくと) | 今回の梁では |
|---|---|---|
| N:軸力 | 材を軸方向に 引張る・押す 力 | 0(横荷重のため) |
| Q:せん断力 | 材を ずらす 力(はさみで切る向き) | 主役 |
| M:曲げモーメント | 材を 曲げる 力(たわませる) | 主役・いちばん大事 |
今回は横向きの荷重を受ける梁なので、軸力Nは0。ずらす力Qと、曲げる力Mの2つが主役になります。

なぜ断面力を見るのか?(現場)
断面力図は、「梁のどこが危ないか」を教えてくれる地図です。現場の目線で見てみましょう。
| 最大になる断面力 | 起こりやすい壊れ方 | 現場での対策 |
|---|---|---|
| 曲げモーメント M | 曲げ破壊 | 断面を大きくする・鉄筋を増やす |
| せん断力 Q | せん断破壊(多くは支点付近) | せん断補強(スターラップ)を入れる |
つまり、Q図・M図が描ければ、どこを・どう補強すればいいかが読み取れます。
求め方:切って、片側のつり合い
断面力の求め方は、切って、片側のつり合いを見るだけ。前回のつり合い(ΣV=0・ΣM=0)をそのまま使います。

1反力を求める
前回の方法(ΣM → ΣV → ΣH の順)
2位置 x で仮想的に切る
知りたい場所で、頭の中でスパッと切る
3片側で ΣV=0
→ せん断力 Q が求まる(上向きの力の合計)
4切り口まわりで ΣM=0
→ 曲げモーメント M が求まる
符号のルール(つまずきポイント)
初心者がいちばんつまずくのが符号(プラス・マイナス)です。
教科書で流儀が違うので、本記事のルールを決めておきます。

| 正(プラス)の向き | 図の描き方 | |
|---|---|---|
| せん断力 Q | 左を上へ・右を下へ ずらす向き | Q図は 上側 に描く |
| 曲げモーメント M | 下側が引張になる曲げ(下に凸) | M図は 下側(引張側)に描く |
実務メモ
コンクリートは引張に弱い性質があります。
だから、引張になる側(=M図を描いた側)に鉄筋を入れて補強します。
符号は「鉄筋をどこに入れるか」に直結しています。
計算例|単純梁に40kN
前回と同じ梁を使います。全長10mの単純梁、左端がピン支点でA点、右端がローラー支点でB点。
左から6mの位置に40kNの集中荷重。反力は前回求めた Ra=16kN・Rb=24kN を使います。

荷重点を境に、前半(A〜荷重点)と後半(荷重点〜B)の2区間に分けて計算します。
前半0 ≦ x ≦ 6m(左側は Ra だけ)
せん断力:Q = Ra = +16kN(区間で一定)
曲げモーメント:M = Ra × x = 16x
x=0 で M=0、x=6 で M=96kN·m(0→96 へ直線で増加)

後半6 ≦ x ≦ 10m(左側は Ra と P)
せん断力:Q = Ra - P = 16 - 40 = -24kN(一定)
曲げモーメント:M = 16x - 40(x-6) = -24x + 240
x=6 で M=96kN·m、x=10 で M=0(96→0 へ直線で減少)

せん断力図(Q図)と曲げモーメント図(M図)
前半・後半の結果を並べて図にします。
集中荷重なので、Q図は段差、M図は三角形になります。
ABP=40kN6m4mQ図+16kN-24kNM図96kN·m
最大曲げモーメントは、公式でも確かめられます。
Mmax = Pab/L = 40×6×4 ÷ 10 = 96kN·m

図の読み方
Q図・M図には、設計に効くルールが隠れています。
いちばん大事なルール

せん断力 Q が 0 を横切る位置で、曲げモーメント M が最大 になります。
今回は荷重点で Q が +16→-24 に変わり、ちょうどそこで M=96 が最大です。
✓集中荷重の単純梁は、Q図は段差・M図は三角形(セットで覚える)
✓Q が 0 を横切る位置で M が最大
✓M が最大の場所=いちばん曲げに弱い=断面を大きく・鉄筋を増やす所
まとめ(完了チェック)
反力から断面力へ。ここまでで、静定梁の解析がひととおりつながりました。
次のチェックが言えれば合格です。
✓断面力(N・Q・M)を説明できる。横荷重では Q と M が主役
✓「切って片側のつり合い」で ΣV→Q、ΣM→M を立てられる
✓符号のルール(Q図は上側、M図は下側=引張側)が分かる
✓単純梁+集中荷重の Q図(段差)・M図(三角形)を描ける
✓Q が 0 を横切る位置で M が最大=Mmax=Pab/L を使える
よくある質問
Q. せん断力と曲げモーメントの違いは?
A. せん断力Qは材を「ずらす」力、曲げモーメントMは材を「曲げる」力です。梁を切った断面に同時に現れます。
Q. 断面力(Q・M)の求め方は?
A. ①反力を求める②位置xで仮想的に切る③片側でΣV=0からせん断力Q④切り口まわりΣM=0から曲げモーメントM、の順です。
Q. 最大曲げモーメントの位置は?
A. せん断力Qが0を横切る位置です。集中荷重の単純梁では荷重点で最大になり、Mmax=Pab/L で求まります。
Q. Q図・M図はどちら側に描く?
A. 本記事の流儀では、せん断力図Q図は上側を正、曲げモーメント図M図は下側(引張側)に描きます。

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