【実験】AIは工事写真の出来形測定値を読み取れる?黒板・目盛り・Excel作成を検証
工事写真に写っている黒板の数字を、AIで読み取ることはできるのか?
さらに、読み取った数値をExcelの出来形測定結果表に自動入力できれば、現場監督の書類作成がかなり楽になるのではないでしょうか。
そこで今回は、実際の工事写真30枚を使って、ChatGPTで検証してみました。
結果は、手書き黒板に記載された測定値を読み取り、Excelの測定結果表に入力するところまでできました。
一方、巻尺や箱尺の目盛りを直接読み取らせると、間違った数値を回答することがありました。
また、Excelについても数値の入力はできましたが、表のレイアウトやグラフが思いどおりにならない部分がありました。
この記事では、実際に使ったプロンプトとともに、うまくできたこと、できなかったこと、改善方法を紹介します。
今回の検証は、次の7つの手順で進めました。
- 工事写真をAIにアップロードする
- 手書き黒板から設計値と実測値を読み取る
- 巻尺や箱尺の目盛りを読み取り、黒板の数値と比較する
- 出来形管理の規格値と社内規格値を設定する
- Excelの出来形測定結果表と工程能力図の様式を用意する
- 読み取った数値をExcelに入力し、表とグラフを作成する
- 完成したExcelを元の工事写真と照合する
今回の検証では、手書き黒板の数値を読み取り、Excelに入力するところまでできました。
一方、写真に写っている目盛りの読み取りには、まだ不確実な部分があります。
また、Excelの表やグラフを希望どおりのレイアウトに仕上げるには、プロンプトや完成サンプルを工夫する必要があると感じました。
手順1 写真をアップする(AIが求める形式に合わせる)
写真は、AIが求める形式でアップします。私が使っているチャッピーは、ZIP形式でのアップロードを求めてきました。AIによっては、1枚ずつのアップを求める場合もあります。どちらの場合も、アップした直後に次のプロンプトで、受け取ったファイルの数を確認します。
私の写真は5測点で30枚でした。30枚すべてを受け取っていない場合は、アップし直します。
Geminiの場合は、ZIP形式ではなくjpgデータを10枚ずつアップロードすることをおススメします。

ChatGPTの公式ページで確認できた数字は次のとおりです。
画像は1枚あたり20MBまでです。
アップロードできるのは3時間あたり80ファイルまで、無料プランは1日3ファイルまでです。私の写真は5測点で30枚だったので、有料プランなら1回の作業で収まります。
- ZIPにまとめるときは、測点ごとにフォルダを分けておくと、あとで写真を探しやすくなります(私の場合は1測点6枚で、全景3枚、幅員の近接1枚、厚さの近接2枚です)。
- ファイル名は変えません。読取結果と元の写真を結びつける目印になるからです。
- 工事名や人の顔が写っている写真は、アップする前に注意点(記事の最後)を確認します。
手順2 黒板の数値を読み取らせる
最初に、黒板の文字だけを読み取らせます。ここで大事なのは、読めない文字を推測で補わせないことです。次のプロンプトをそのままコピペして使えます。

私の写真では、黒板に気をつける点が2つありました。
1つ目は、実測寸法のhの欄が、最初の写真では空欄で、あとの写真で書き足されていたことです。5測点のうち4測点がそうでした。
2つ目は、No.9で、実測のhが写真によって「50」と「55」の2通りに読めたことです。条件の3と5は、この2つを見逃さないために入れています。No.9のhは、55で進めることにしました。
AIの読取結果は、【検証後に記入:黒板が写っている15枚のうち読めた枚数と、読み間違えた箇所】です。

手順3 目盛りを読み取らせ、Excelの一覧にして黒板と照合する
黒板の数値が、実際の目盛りと合っているかを確かめる手順です。ただし、AIは現時点で目盛りの読取が苦手です。
チャッピーも、写真の目盛りは正確には読み取れないと答えました。そのため、黒板の値を優先し、目盛りの読取値は確認用にします。
目盛りを読ませるときは、2つの工夫をします。
1つ目は、黒板の値を伏せたまま読ませることです。黒板の値を先に見せると、その数字に合わせて読んでしまうおそれがあります。
2つ目は、目盛りのまわりだけを拡大した写真にして渡すことです。全体の写真のまま読ませて外れたので、拡大した写真で読ませる方法は、これから試します。
【検証後に記入:拡大した写真での結果】
読み方のルールは、使っている巻尺と箱尺に合わせて書き換えてください。次のプロンプトは、私が使っている巻尺と箱尺の読み方です。




箱尺の目盛りは5mm刻みですが、AIが5mm単位で正しく読み取れるとは限りません。
実際に、幅1,520mmを1,550mm、厚さ150mmを200mmと回答したことがありました。
Claudeでは、拡大写真を使った検証で、15項目すべてが黒板の値との差±5mm以内という結果も得られました。
ただし、この検証では黒板の正しい数値をAIに先に伝えていました。そのため、AIが正解の数値に引っ張られた可能性もあります。
目盛りを正確に読み取れるか確認するには、黒板の数値を隠した写真を使い、初めて見る状態で検証する必要があります。

手順4 規格値と社内規格値を渡す
規格値の渡し方は2通りあります。1つ目は、数値を自分で入力する方法です。2つ目は、施工計画書にある施工管理基準のページをPDFでアップする方法です。PDFはAIが読み取れる形式なので、PDFでも問題ありません。
PDFを渡すときは、基準の全ページではなく、該当する工種のページだけを切り出して渡します。AIに山形県の施工管理基準のPDFを全体から読ませたところ、幅の規格値の欄が2つの数字の並びで読み分けられませんでした。数値は、AIの答えをそのまま使わず、基準の原本で確認します。

山形県の施工管理基準は、発注する部局によって別の冊子があります。今回の工事がどの冊子に当たるかは、特記仕様書で確認してください。
数値を入力する場合は、次のプロンプトをそのまま使えます。

手順5 出来形測定結果表と工程能力図の完成見本を用意する
AIでExcelを作成するときは、完成した表やグラフの見本を用意すると、希望するレイアウトを伝えやすくなります。
見本はExcelでもPDFでも構いません。
Excelの場合は、元のセルや計算式を利用できる可能性があります。一方、PDFは完成した表やグラフの見た目をAIに伝えるのに役立ちます。
おすすめは、Excelの元様式とPDFの完成見本を両方渡す方法です。
ただし、AIが元のExcelの枠線や図形、グラフを完全に保持できるとは限りません。完成したファイルは、元様式と比較して確認する必要があります。
手順6 出来形測定結果表と工程能力図を作る
次に、黒板から読み取って確認した数値を使い、Excelの出来形測定結果表と工程能力図(管理図表)を作成します。
今回は、実際に使用しているExcel様式をアップロードして、ChatGPTに数値を入力してもらいました。
結果として、設計値と実測値を入力し、その差をExcelの計算式で求めることができました。
ただし、思いどおりに仕上がらなかった部分もあります。
元のExcel様式のレイアウトが一部崩れたり、グラフが希望する形にならなかったりしました。
そこで、より正確に作成するために、プロンプトを工夫することにしました。
特に重要なのは、Excelの元様式と完成見本を用意することです。
元様式は数値を入力するために使い、完成見本はレイアウトやグラフの見た目をAIに伝えるために使います。
また、測定結果表とグラフは、できれば別々の工程で作成した方が、修正箇所を確認しやすくなります。
以下は、今回の検証を踏まえて改善したプロンプトです。


手順7 完成したExcelをチェックする
最後に、AIが作成したExcelを確認します。
今回の検証では、黒板から数値を読み取り、Excelの測定結果表へ入力することができました。
しかし、数値が正しく入力されていても、Excelの様式が正しく作成されているとは限りません。
そのため、次の4つを確認します。
- 測定値の確認:黒板の数値とExcelの数値が一致しているか。
- 計算式の確認:差が「実測値-設計値」になっているか。
- グラフの確認:測点の順番や規格値の線が正しいか。
- レイアウトの確認:枠線、見出し、略図、印刷時の配置が崩れていないか。
AIにチェックさせる際には、次のプロンプトを使用します。

注意点とまとめ
今回、実際の工事写真30枚を使って、ChatGPTによる出来形測定値の読み取りを検証しました。
その結果、手書き黒板から5測点分の設計値と実測値を読み取ることができました。
一方、巻尺や箱尺の目盛りを直接読み取らせたところ、間違った数値を回答することもありました。
黒板の文字を読み取ることと、実際の測定器具の目盛りを読み取ることでは、精度に違いがあると感じました。
さらに、読み取った数値をExcelの出来形測定結果表に入力することもできました。
ただし、表のレイアウトや工程能力図については、希望どおりの仕上がりにならない部分もありました。
この点は、Excelの元様式やPDFの完成見本を用意し、プロンプトを工夫することで改善できる可能性があります。
今回の検証では、AIによって出来形管理の書類作成を省力化できる可能性を感じました。
ただし、AIが読み取った数値や作成したExcelを、そのまま正しいものとして扱うことはできません。
工事写真や測定記録との照合、規格値の確認、最終的な合否判定は、人間が責任を持って行う必要があります。
AIに任せられる作業はAIに任せる。
そして、人間が確認すべきところは、しっかり確認する。
これが、現時点での実用的な使い方だと思います。
